骨髄移植日記(Day 22〜Day 28)
Day 22 by お父さん
サイトメガロアンチゲネミアは陽性だった。値としてはまだ低くそれ程心配することもないようだが、早速、フォスカネットという薬を始める事になった。この薬は保険適応外のため同意書にサインする。
今のところサイトメガロウイルス(CMV)による症状はない。CT検査でも病巣は見られなかったらしい。午前中にCTへ行ったらしい。「鎮静剤なしで出来ました」と先生が言っていた。CMVの症状が出てからでは遅すぎるので抗体検査で陽性となれば直ちにフォスカネット投与となるそうだ。1本7,600円で2〜3日分とのこと。1ヶ月は必要らしく出費はあるが命にはかえられない。
白血球が立ち上がってきているので、それに乗っているウイルスも増え、活性化してしまうらしい。パルス療法で強力な免疫抑制をかけているので陽性になってくるのも当然なのだそう。フォスカネットでCMV押さえ込んでおくれ。
網赤血球は8‰とのこと。10‰以上が一つの指標なのだそうで非常に良いとのこと。好中球は350。上がってきている。血小板は5000とまた下がった。
友紀野は今日は少し感情がゆれていた。ビスケット(チョイス)を食べた。久しぶりに固形物を口にした。ゼリーは一口。ポカリも飲む。昼「ぽけもんー」とこだわったようで、夜7時のポケモンを見せてあげてねとお母さんに言われる。
ポケモンを見た友紀は喜んでいた。その後が大変だった。寝たくないのだろうが、「プリンー」「ポカリ−」「おしっこー」と次々リクエストする。「マンマー、マンマー」と泣くので、ビスケット(マリー)や牛乳(50cc飲んだ)、パンを焼いてきてもらったりと看護婦さんに手間をかけてもらった。その度に歯磨きもして、テーブルやらあぶちゃんやら、手を拭いたり・・・。21:00になっても寝ない。「ゴハンー、たべるー、もってくるー、たべたいー、ごはんー、ごはんー」とさめざめ泣いている。
「お父さんいると甘えちゃうのかな」との看護婦さんの助言で任せて帰ることにする。食べ物で泣かれるとひもじい思いをさせたくなくてこちらも悲しくなる。先生は「いろいろリクエストできるようになってきたね。」と、よしよし、という感じ。「何でも食べていいです」とも言っていた。僕が帰った後、友紀ちゃんすぐ寝たかな。明日の朝からはご飯出してもらうように頼んでおいたよ、お楽しみに。
Day 23 by お父さん
朝、昼は出してもらっても食べなかったそうだ。「見て満足という感じでした」と看護婦さん。嫌がりはしないよう。Hさんが「CMV出ちゃいましたねー、まだそれ程じゃないので」と言ってくれた。「朝から『プリン』て言ってますよ」とも。
昼のおやつにプリンを出してもらう。友紀、満足げ。半分くらい食べた。ポカリはいらないらしく「りんごジュース」とリクエスト。看護婦さんに相談する。「友紀ちゃんのことだから、他のジュースじゃダメなんですよねー」とわざわざ取りに行ってくれる。
夕食も「ご飯だよ」と言うと、「パン」と一言。看護婦さんが「分かったわ、トースト焼いてきてあげる。」と持ってきてくれる。良かったねー友紀。耳をとって1/4くらい食べた。自分でちぎりながらちゃんと食べた。
ハンバーグは一口目を入れたが、べー。桃缶も人参も自分から「モモー」「ニンジンたべるー」と言ったけど、べー、だった。ご飯は4口くらい食べた。片付けようとすると「たべるー」と言うのだが食べない。きりがないので「薬飲もう」と言って片付ける。飲み薬が多い。点滴から内服に大分切り替わってきている。嫌がらずにちゃんと飲んだ。
熱は37.1℃くらいで横ばい。機嫌は少し上向きな感じ。絵本”もこもこもこ”を声に出して自分で読んでいる。楽しそうだ。ビーズ玉で遊んだ。IVHをあぶちゃんにボタン止めしているテープを気に入っていて、4枚くらい切ってやるとこれで遊んでいる。絆創膏のかわりになっていい。手の皮剥きもこれで収まる感じ。
夕方は昨日と同じくわがまま言っている。それだけ元気になってきたのね。寝かせるのをあきらめて時間で帰ることにする。ところが、おでこに水ぶくれのような小さい発疹がぱーっと出ているのに気づく。今まで見たことがないので少し驚く。丁度、研修医の先生が来ていたので診てもらう。「ヘルペスじゃないですよね」と聞いたら「違うと思います。小さいですから」。「アレルギーでしょうか?」とも聞いてみた。ここんとこ食べ始めているので。結局「調べてきます」と出て行かれた。うーむ。
しばらくして来て「T先生にも聞きましたが昨日から出ているそうです。治療の過程で出るものの一つと思います。感染もないですし。様子見としますとのことです」。何とT先生は昨日から気づいていたらしい。「さすがですね」と言ったら、「さすがですね。」と研修医の先生。うーむ。
19:30頃、T先生ジーンズで登場。「GVHDです。」とのこと。「出たり消えたりするのでネ」と。はい、分かりました。「WBCは2200、Pltは2万、輸血効果が出るようになりましたね。」とのこと。「おしっこも良く出ているし、ポカリスエットなんかを飲んでくれるといいですね。ご飯も食べていいですね。」と言ってパルス療法をやって帰っていかれた。
友紀は「ねない」と言って怒っているので、アンパンマンをつけて見させる。30分くらい一緒に見て、「じゃあ、また明日ね」と言って出てくる。寝たかな。そうそう、連休中はストックがないので「プリンは持ってきてもらえますか?」と昼の看護婦さんに言われた。OK、OK。
Day 24 by お父さん
14:30頃入室。お母さんに買ってきてもらったプリンを出す。友紀、「プリンだー」と喜んで食べる。全部食べた。「今日はポカリがあまり進まないですねぇ」と看護婦Kさん。ポケモンのビデオを持っていったので、友紀に「ポケモン見る?」と聞くと、「ピカチュウいるかなー。」と見たそうだ。喜んでみている。
昨日のおでこのプツプツは消えている。触ると少し残っている感じ。ほっぺが赤い。やはりGVHDは出たり消えたりするようだ。
夕食はご飯を6口くらい。揚げ出し豆腐を、「とうふだー、とうふー」と言って、中身を全部食べた。サトイモや桃缶は切るだけだが、今日は気に入ったものは全部食べる。だんだん良くなっていくね。
ビーズ玉で遊ぶ。窓越しにナースステーションのKさんたちに見せるが、パンダ巾着に友紀しまってしまう。看護婦さんたち大笑い。準夜はYさん。友紀は和らいだ感じになる。Yさんだと安心するようだ。ビーズのついた紐を首にかけてみせる。「ワンワン、ネコー、ハートー」とYさんに説明している。
夕方、雷がひどくなる。友紀は「ぴか、どんどん」と平気な感じ。「またまたー」と光るたびに言う。Yさんは苦手なんですと言っていた。「友紀ちゃんすごいねー」とも。
夕方のおやつはムギムギと牛乳。友紀、おいしそうに食べる。牛乳を飲んでいるときに何と停電! まっくらになって、クリーンウォールも止まってしまったので、シーンとなる。「友紀ちゃん大丈夫だよ」と声をかけ頭をなでる。すぐに点いたので、友紀は何事?という程度。Yさんが点滴の確認に回ってきた。バッテリーがあるので大丈夫。クリーンウォールとエアコンを再起動してもらう。いつもの風音がもどった。「T先生は雷がもう少しおさまってから来るそうです。」と。先生も苦手なのかな。
19:30頃、友紀はまだ寝ないが、看護婦さんに任せて帰る。元気になってきたと思う。手の皮剥きはあいかわらずなので、テープを切って渡しておく。しばらくは気がまぎれると思う。先生には会えなかったので数値的なことは今日は分からず。
Day 25 by お父さん
昼の担当はHさん。14:30頃、部屋の前に着いたら、丁度、隣のゆきちゃんのところにいて、慌てて出てきた。朝はパンを1/2、昼はご飯をフリカケで全部食べたとのこと。「絵本を読んでいたんですけど、ふうちゃんのパパ、ママが来たら、友紀ちゃん『パパー』って怒り出しちゃって」と困った様子。ハイハイと言って、友紀の部屋へ。
友紀はねっころがっていたが、「おっき出来る?」と聞くと、むっくり起きて、IVHのルートを示して、「あかー、しろー」としゃべりだした。プリンを出すと喜んで食べる。焼きプリンもあけてというのであけたが、一口でべー。タカナシの方は全部食べた。
しばらくはポケモンを見て、「ピカチューはー?、ニャースはー?」と見ている。笑ったりして機嫌よい。夕食は豚肉のソテーは全部食べた。ご飯は6口くらい。ポカリはあまり飲まない。そろそろ麦茶を用意してもらったほうがいいかもしれない。
エプロンを外すのを嫌がり、何だかすねている。ビーズで遊ぶが、全部ベットにあけてしまったり、パンダ袋に入れたりと大変だ。オムツもずっと「でてない」と言っている。何だか遊びが足らなくなってきたようだ。ビーズに集中しているときは自分で通して結構上手だ。あきてくるとイライラするようだ。絵本、ビデオ、パズル、何だかどれもダメな感じ。目先を少しでも変えさせようと、モンチャをつけてみる。久々で少し嬉しそうになる。やはりビデオも入れ替えていかないとダメだな。
血小板は5万あるとのことで、今日の輸血は見送りだそう。先生は今日も会えなかった。
プレドニンのせいかもしれないが友紀の機嫌はゆれている。パジャマに着替えてオムツ交換して、泣きながら怒っている。着せたパジャマの襟をつかんで首をしめるような感じで剥ぎ取ろうと怒り泣き。なだめてもダメなので、ついに僕のほうがこらえきれず、「じゃあぬいでなさい、お父さんもう帰るからね。」ときついことを言ってしまった。脱がせたパジャマを友紀は、「きるー、きるー」「ねんねー、ねんねー」と泣いている。ゴメンネ、もう帰るからねなんて言っちゃって、まだ、19:00までは20分もあるよ。ピングーを一緒に見ようよ。友紀を抱っこしてピングーを見る。友紀は少し落ち着いてビデオの中身をしゃべりだした。
眠そうになってきたので、ゾビラックスを飲ませる。せきがひどくなってきた(多分眠くなって抱っこしてて体温が上がったせいかもしれない)ので、「吸入しましょう」と準夜の看護婦さん。吸入は友紀、ちゃんとやる。おしっこが出ていたのでオムツを替える。
友紀は寝入りそうになると「うわーん」と泣く。寝たくないのだろう。淋しいよね、毎日毎日。ごめんねきつい事言って。明日また来るからね。帰り際、優香ちゃんのパパ、ママが帰っていった。優香ちゃん、あいかわらず大声で泣いて怒っている。大駐車場でも聞こえた。こどもたちは皆淋しい思いをしているよね。頑張れは禁句らしいが、こどもたちは話を聞いてあげるとか、思いを分かち合うとか言うのって難しいよね。頑張れって言うしかないよ。今日は、友紀、19:30頃寝てくれたからいいけど、これから先、泣いてても置いてくしかないことが増えるよな。今までもそうしてきたけど、何だか今日はいつになく後ろめたさが残った。もう少し心にゆとりを持たなくては。
Day 26 by お父さん
祝Aランク開放! WBC1400と下がったが、好中球が504とギリギリ500を越えたので、Bランクとなった。メデタイ!
Pltは17,000、網赤血球は13‰と赤血球の輸血はもう要らないかもしれないらしい。CRP0.2、ビリルビン値は0.6。肝臓、腎臓ともに問題ないらしく、先生も「大分良いですね。油断は出来ませんが。」とのこと。
Bランクと言っても、キャップが無くなって、部屋の中の入り口とのカーテンが開放になった程度。クリーンウォールはまだ動かしたまま。先生曰く「これがあってもなくてもというところですが、あった方がよりきれいということで。」とのこと。様子見ながら少しずつ緩めていくようだ。
友紀の機嫌は昨日に比べてよい。おしゃべりもする。夕方行った時に食べていた夕食をご飯だけだらだら食べつづけているので、フリカケをかけて早めてやる。1/2で嫌がるようになったので、ごちそうさま。
お母さんがお絵かきをしたのをはさみで切り出していた(友紀が喜んだようだ)ので、これで遊ぶ。友紀、自分ではさみを使っていたが、最後はばらばらに。途中、研修医のU先生をT先生がつれて入ってくる。説明していた。友紀がはさみを使っているのを見て「手の震えがないね。」と「プログラフの血中濃度が下がったのかな。」と言っていた。キメリズム検査の結果はまだ出ていないらしい。せきが出るのは好中球が増えて肺が水っぽくなるせいもあるし、もともとCT像で移植前から白血球の浸潤があったらしく、まあ出るでしょうという感じ。気管支炎も考えられますとのこと。
19:00の検温で37.7℃。氷枕をあてる。友紀は寝たくないのと面会終わりがいやらしく怒っている。少しぎゅっと抱きしめて説明してなだめる。あきらめたのか、「ねるー」と言う。「ピングー」と言うので、ビデオを替える。まだ寝そうになかったが、19:30頃帰る。
そうそう、ふうちゃんも今日、Bランク開放で外泊になったそうだ。入れ替わりで晃也くんが入っていた。後でメールだしておこう。ナースステーションの窓からHさんたちが、「おめでとー」と手を振ってくれるが、友紀はいつものように、何なのー、って感じ。僕の顔をじっと見て、「ぼうしはー?」と言っていた。友紀、気づいたようだ。だんだんよくなるね。
Day 27 by お父さん
ポケモンの”ピカチュウの夏休み”と、アンパンマンの”ハンバーガーキッド”を買っていく。ユニーのエラートで会員10%引き。友紀は喜んでみている。部屋に入ったときからすぐビデオを見つけて「とけもんだー。」と嬉しそう。
夕食は結局18:00頃までかかってご飯全部と鮭の焼いたのは全部、カレー味のジャガイモ全部、麦茶を1/3くらいと結構食べた。さすがに夕方のおやつは無しだ。
そうそう、お母さんが帰るときには、「ばいばいー」と手を振っていた。機嫌よい。食後もう18:00過ぎなので着替えさせて、歯磨き、オムツを替える。U先生がIVHのルートの交換にきた。三つ又までが短くて友紀の横腹近い。Hさんが「明日は長くしておきます。」と言っていた。
19:00回ったので、「お父さんもうすぐ帰るね。また明日ね。」と言うと、「イヤー」とすねた感じで怒っている。しばらく説得して、抱っこしたりしてなんとか寝ころがせる。「でんきー、タオルー。」といつもの流れ。
T先生が来て、「何、まだ遊んで欲しい?そうね遊びたいね、うん、うん。」と言って出て行く。まあ、任せて帰る。今日はピングーでなくピカチュウをリクエストされたのでそれをかけておく。
今日の好中球は547。ちゃんと増えている。明日のマルクに備えてPltの輸血があった。Pltは5万あったそうで、明日は輸血はしないそうだ。マルクの結果がよければクリーンウォールもなくなるとのこと。
今日、部屋にいったら足マットやミルトンなどなど、Aランク品が無くなってスッキリとした感じになっていた。いいと分かっていても、急にこんな感染対策がゆるくなって少々不安な気もしてしまう。
Day 28 by お父さん
何とBランクも開放となった!早い!もっとかかると思っていたので嬉しい誤算だ。好中球が931となり、マルクの結果も良かったおかげだ。Pltは7万とのことで、骨髄ではDay14のマルクの5倍の勢いで作っているらしい。その時のキメリズム解析は、ドナー側が90%になっていたらしい。「早いですね」と先生が言っていたとのこと。
VODの心配はもうほとんどなくなったらしい。今日からハイカリ輸液もなくなり食欲も出ているので回復しているのが良く分かる。皮膚もきれいになっている。気管支炎が酷くなっているが、熱が出れば抗生剤を使っていくそうだ。
まだ個室からは出なれない。他の子供と接触しないようにするためらしい。クリーンウォールやアルコール綿など、もろもろの無菌室グッズがなくなって広々している。ドアが開放になったので、かえって廊下の音がうるさいくらい。友紀は、廊下から声をかけてくれる看護婦さんたちに、ガン飛ばしている。”何なのー”という感じだ。
U先生が包交に来た。U先生には慣れていないので嫌がっている。マルクの鎮静剤のせいで友紀はトロトロとしているので少し機嫌が悪いせいもあるのだが。
サイトメガロアンチゲネミアはまだ分からないそうだ。しばらくホスカビルは続くとのこと。昼はYさんだった。おやつをたくさん欲しがったようで、アイスやらゼリーやら牛乳やら食べたようだ。夕食はほとんど食べず。そのくせ、夕方のおやつ、歌舞伎揚げは1枚、バームロール1/2、ポカリ160ccとまた食べた。プレドニンのせいか?食いすぎな気がする。おなか大きい。大丈夫かね?
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